町田・相模原イーストメリーウインドオーケストラ

第七回定期演奏会 / グリーンホール相模大野(2012/02/18)

第六回定期演奏会が無事に終了した一年前。大盛り上がりの開票方式で、第七回定期演奏会の曲を選出。それが3月5日のこと。そこから6日後、3月11日。東日本大震災が発生しました。

計画停電などの関係で普段の夜間練習が一ヶ月ほど不可能になったりしながらどうにか徐々にペースを取り戻し、やたら大規模な「夏メリvol.2」、相変わらず賑やかな合宿などを経て、ようやく辿り着いた第七回定期演奏会です。…まあそんなところから書いていては到底書き終わらないので、ここはぐっと堪えて当日のことだけを書くとしましょう。

今回の会場は、イスメリにとって初めてのグリーンホール相模大野(大ホール)。グリーンホールといったらとにかく「でかすぎ」というイメージが強く、これまで避けて通ってきた会場です。しかし今回はいつもの町田市民ホールが取れず、保険で取れていたグリーンホールでの開催となりました。当然のことながら集客は不安でしたし課題にもなりましたが、普段使わない会場の新鮮さというのは当日のテンションをかなり上げてくれたのではないかと思います。

さて、色々すっとばして本番です。今年もロビーコンサートはお馴染み“クラッツ”と、加えてフルートアンサンブルでお送りしました。町田市民ホールよりもロビーが広いので、お客さんがばーっとまわりを取り囲んでいてなかなか良い眺めでした。ロビーを二階から見下ろせるのもまた良し、です。さあ、いよいよ開演!

第一部。最初にお送りしたのは「リスプレンデント・グローリー」。選曲が決定してから「譜面が絶版だった」とかそんなこともあったこの曲ですが、なんとか譜面が手に入ってよかったですね(他人事)。二曲目は「丘の上のレイラ」。小編成用の曲なこともあって、大編成なイスメリで上手にまとめるのはなかなか難しい曲でした。この曲はレンタル譜だったので、“楓葉の墓(2010)”、“ロボの墓(2011)”に引き続きの譜面回収箱“レイラの墓”が用意されました。来年もこの儀式は続くのでしょうか。

第一部の最後を飾ったのは「ウィークエンド・イン・ニューヨーク」。お馴染みスパークの楽曲ですが、ガーシュイン「パリのアメリカ人」を思わせるようなちょっとジャジーでお洒落な雰囲気から一転しての“スパーク節”がとっても独特な、非常に面白い曲でした。ソロが多く、ドラムも入ります。合宿では「これはどんなシーンだと思う?」といった「ニューヨークの週末を妄想しようコーナー」が展開されたりと、恐らく団員のなかでもこの曲への思い入れが強かった人は多かったのではないでしょうか。

それに加えて、今回はなんと生のハープも使用しました。生のハープとピアノが加わることによって様変わりする雰囲気に、一週間前のリハーサルで団員一同鳥肌全開でした。このハープなどに関しては第三部でまた詳しく書くとしましょう。

第二部は、遂にやってきましたディズニーステージ! これまでも度々「ディズニーやる?」と挙がってくることはありましたが、どうも月並みな選曲しか浮かんで来ず、実現には至りませんでした。それがなぜ今回実現に至ったかというと多分いろいろあるのですが、まあそれこそ集客しやすいだろうというような理由もあれば、今回の実行委員長の気合いとこだわりでもあり、…いろいろです(笑) 団長に言わせれば「あえてのディズニー」だとか。

「Ladies and gentlemen!」。真っ暗闇の中、なにやらディズニーっぽいアナウンスから始まった第二部。声が「Thank you.」と言い終えるや照明が点き、「ディズニーランド・セレブレーション」で第二部ディズニーステージは幕開けです。この曲には2012年現在東京ディズニーシーで行われているショー「ファンタズミック!」のテーマが盛り込まれており、イスメリにしては「旬」な選曲。ディズニーステージの参考に、という口実で実行委員長や団長あたりは二回もシーへ行きました(笑)

ところでイスメリの第二部といえば、第三回からずっと長いこと「司会なし」のスタイルを貫いてきましたが、正直なところそれもそろそろ限界。今回はなんと、実行委員長直々の司会…というより小粋なトークで曲を進めていきました。これがその、身内のことではございますが秀逸でして、そうそう、最初のアナウンスも彼だったのです。本番まで殆どの演出を秘密にしていたくらいですから相当の策士です。

…いけないいけない、この調子だといつまでたっても第三部に辿り着かない。えー、そんな感じで小粋なトークやら小ネタやら挟みつつ(あ、MC中のBGMは全て生演奏でした。ロビコン部隊が大活躍です)(※)、二曲目は「映画『アラジン』より」。アラジンの曲って、すごく「ディズニー!」って感じがしますね。魔法にかけられたような、わくわくしてしまう音楽。演奏している側もすごーくディズニー気分に浸れる、素敵なメドレーでした。

(※【追記】書いてくれと言われたので。あのBGM、フルートチームはロビコンの流用なのですが、クラリネットチームは一週間前にいきなり譜面渡されての無茶振りでした。結果、二部ほとんど休みなし。御愁傷様でーす!)

続く「不思議の国のアリス」はサックスをフィーチャーしたムーディーなビッグバンドジャズナンバー(横文字多いな…)。そしてディズニーステージのフィナーレを飾るのは「ライオンキング・メドレー」。冒頭の、これまた本番ぶっつけで前列クラリネット隊の演奏に支障をきたした「百獣の王リラックマ」の演出はヒドいものでした(褒め言葉)。新たなキングリラックマ…が…。

そんなわけで、だいぶワンマンではあったものの第三回以来に「よくできた」演出・進行だったのではないかなあと思える今回のディズニーステージ、お楽しみ頂けたでしょうか。

さあ、やっと辿り着きました第三部。今年のメインは、J.バーンズ「『交響曲第三番』より 第三楽章、第四楽章」。「アルヴァマー序曲」「百年祭序曲」など、イスメリでも多くの作品を演奏してきたバーンズですが、この曲を作曲したときバーンズは二人目の子供である愛娘ナタリーを生後半年ほどで亡くしたばかりでした。そのため、この曲は他に類を見ないほど“悲劇的”な作品になっています。第三楽章につけられた副題は「メスト “ナタリーのために”」。ナタリーがもし生きていたら話してあげたであろう言葉、また別れの言葉でもあるそうです。

第三楽章は、グロッケン、ビブラフォン、クロテイル、チャイムといった鍵盤打楽器に加え、ハープとチェレスタも混ざり合っての、非常に幻想的な雰囲気で始まります。ピアノで代用することもできますが、この曲を演奏するにあたって我々の団長は妥協を選べず、イスメリ初となるハープとチェレスタの起用が決定しました。一週間前の練習で初めてその音色を聴いた感動は忘れられません。ハープとチェレスタ、そして多種の鍵盤打楽器たちが作り出すあの響きは、少なからず本番の熱演を生むきっかけとなったはずです。

バーンズがこの交響曲を完成させてから三日後に、息子であるビリーが生まれます。第三楽章がナタリーのためであるならば、続く第四楽章はまさにビリーのため。ナタリーの死を悲しみつつもそれを乗り越え、ビリーとともに新たな未来を切り開こうとする、そんな曲に第四楽章はなっています。まったくの偶然ではありますが、震災から一年弱が経過した今この曲を演奏できたのは何かの縁かもしれません。

第四楽章の終盤、いかにもバーンズなコーダ部分に達したとき、この一年のいろんなことが思い出されて危うく何かが決壊しそうでした(演奏ではない)。そんな団員も多かったのではないでしょうか。

わりと思い入れが強すぎて意外に書けなかったのでこれで本編おしまいです(笑) さーてアンコール。一曲目は夏メリに引き続きの「宝島」でした。本編が大変だったため、手抜きとも言います。いつもパーカスソロがなんとなく寂しいなあと思っていたので、今年はタマゴ型シェイカーを木管組に配布してみたら楽しそうにしゃかしゃかしてくれたのでよかったです。

そして最後はもちろん「ルパン三世のテーマ」。宝島〜ルパンという流れは第二回以来なんですねー。あの頃よりも断然暴れて、でもあの頃よりも断然上手くなっているのは嬉しいことです。なお観てない方には全く不明のワード「エグザイル」についてですが、あれは本番一時間前ぐらいに突発的かつ自発的に決まったものでして、ルパンのネタ切れ感を打破してくれたかもと思っております。ネタの必要性に関してはお答えできません。

それはそれは楽しく本番を終えて、恒例のお見送り、集合写真、そして打ち上げ! 演奏会を作るのって本当に大変なんですが、終わったあとのこの幸せ感を一度味わってしまうと「またやりたい!」という気持ちしか出てこないんですよね〜。なんとも罪なものです。

震災が突然襲いかかってきたように、このあとの一年間に一体なにが起きるのか、分かる人は誰もいません。でも、震災後久しぶりに集まって音を出したときの「音楽できるって幸せ」という心からの気持ちを忘れずにこれからも演奏会を重ねていきたいと願っています。また次の演奏会でお会いしましょう。

第七回定期演奏会の模様

プログラム

  • 第一部
    • リスプレンデント・グローリー / R.ガランテ
    • 丘の上のレイラ / 星出尚志
    • ウィークエンド・イン・ニューヨーク / P.スパーク
  • 第二部 〜イスメリ×ディズニー〜
    • ディズニーランド・セレブレーション
    • 映画「アラジン」より
    • 不思議の国のアリス
    • ライオンキング・メドレー
  • 第三部
    • 交響曲第三番より 第三楽章、第四楽章 / J.バーンズ
  • アンコール
    • 宝島 / 真島俊夫 編
    • ルパン三世のテーマ / 星出尚志 編